お総菜的な魚のフライといえば。
食堂の定食やスーパーなどで買うお総菜で、魚のフライといえば、アジフライを思い浮かべる。が、旅先の、特に海が近い町では、違う文化に出合うこともある。
調査取材で北海道の十勝平野を南北に縦断したときのこと。足寄で豚丼を食べ、北見でジンギスカンを楽しみ、その翌日。午前中に佐呂間町で全要件が終了し、午後のフライトに間に合うべく、女満別空港へと向かった。
酷暑の夏が長引いた2023年、9月後半と言えど、道東はまだそこまで寒くない。
車の窓を開け、気になる料理店の看板でもないものか、とロードサイドに目をこらしながら進んだが、空港への道すがら、残念なことに心ときめく出合いがなかった。
そういえば空港2階にレストランがあったな、と思い、案内板を見ると、ちゃんとある。
当たり前だが。
寿司か、スープカリーか、北海道名物メニューいろいろな店か。いつものことだが、そこで欲が出てしまい、すぐには店を決められない。しかしフライトの時間もあることだからと、入店してもまだ迷える、メニューいろいろの方を選んだ。
迷えるとはいえ、カレー、ラーメン、海鮮の丼、豚丼、定食くらい。
今回は海鮮をあまり食べていないなぁ、とメニューを追っていた目が留まったのは、以外にもカレーだった。それもホッケフライの。
内地では、ホッケの一夜干しをたまに焼く。干したことでギュッと身に詰まった旨み、ホロッとした食感、食べた時の甘み。どれも好みだ。聞くところによると、北海道では生のホッケが食べられる。フライにするとどんなものだろうか。
シンプルにカツカレーが好き、ということもあるが、上記の思いが独り言のように頭の中を巡り、オーダーする。
ひと口大のフライが数個のったスープカレー程度のものだろう、空港内のレストランだからね、なんて思っている私の前に運ばれてきたのは、20センチ強ある皿の直径を3/4ほど占めるはある、大きな、本当に大きなホッケフライがカレーをおまけとして引き連れてきたひと皿だった。
ホッケを旅する。それもあり。
パリッとした衣、噛むとジュワーっとしみ出す旨みのある脂。ホクホクの身。
あぁ、ホッケだ・・・。
タラのフライに似ているが、それよりは甘みを感じる。
半分をそのままいただき、もう半分はほぐしてスープカレーとともに。
ホッケはカレーと合うのだ、と納得。
食べ進めながら、このひと皿ではホッケが足りない気がして、ホッケのフィッシュアンドチップスにも食指が伸びかける。
が、フィッシュはいいがチップスは持て余すな、と腹具合から考え、我慢することにした。
ホッケは北海道のメジャーな魚のひとつ。刺身もあると聞いたので、それはそれは、とスーパーへ行き探したことがあったが、見当たらなかった。
なんでも、ホッケは鮮度が落ちやすく、朝さばいて冷蔵しても夕方に刺身では食べられないとのこと。提供されている生ホッケの多くは、旨みや食感を損なわないよう瞬間冷凍したものだ。
ただし刺身はないが、お惣菜コーナーへ行くと、ホッケフライはある。家庭でもフライにして食べることは多い。給食の献立にも入っている。北海道の方に後日尋ねると、このような返答だった。
給食でホッケフライ! そんな日は朝からソワソワしてしまいそうだ。
ところで。
北海道におけるホッケの主要産地は、礼文や羅臼、積丹あたり。北の台地のそのまた北の海だ。魚へんに花と書くのは、北の大地に桜が咲く頃、旬を迎えるから。秋には産卵のためにまた旬を迎える。つまり生のホッケをいただくなら、春と秋。
その時期以外でももちろん食べられるが、多くは開きだ。
ちなみに北海道漁業協同組合のホームページによると、ホッケの開きが販売されるようになったのは昭和50年代に入ってからのこと。まだ半世紀も経っていないのか。
それなのに、そのおいしさで多くの人の心を奪ってしまっているホッケは、なんとスゴいのだ。
シーズンになると、ちゃんちゃん焼きで提供する店もあるという。
次回の北行きは、ホッケ料理巡りも楽しみに加わるのだろうな。